幽洞の備忘録

ゲームやって思ったことかく。

ヒードランの故郷は何処? -移動手段と火山についてふわっと考察-

ハッピーポケモンデー!さっとらです。

 

LEGENDSアルセウスの単発考察兼日記です。

 

写真展やってからあまり期間は開いていませんが、またしてもヒードランについてです。というのも、この記事自体が写真展書いてるときに頭をよぎった構想が元になっているので、あれから派生したと言ってもいいかもしれません。

 

さて、LEGENDSアルセウスでは久しぶりにヒードランの図鑑説明が追加されました。ここからは、ヒードランがテンガン山内部の溶岩から生まれた、という伝承が当時は存在していたことが分かります。

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しかしながら、長くポケモンに触れている方ならご存知の通り、ヒードランがテンガン山で出現したことはこれまでの作品で一度もありません。それどころかストーリーの台詞や説明の中で、テンガン山との直接的な関係すら語られていません。

ヒードランは伝説のポケモンなので、生息している場所は非常に限られています。さらに、ハードマウンテンはシンオウ地方において、旅立ちの町フタバタウンや最大の町コトブキシティから最も(物理的な)距離があるダンジョンであり、リバースマウンテンはBWの時代では劇中でど田舎言われるヤマジタウンからしか行くことができなかったりと、現代では秘境と言えるような場所に生息しており、軽々と移動できる場所とは言えません。

仮に、ヒードランが本当にテンガン山の生まれだった場合、ヒードランは何らかの手段で現在の生息地まで行きついたはずで、今回の記事ではこれについて考えていきたいと思います。

 

 

なお、前提としてポケモン図鑑の説明や、説明中にある伝承は正しいということにします。なにしろ出発点なので、そもそもこれが嘘だと何も始まりません。

しかし、仮にLEGENDSアルセウスの図鑑説明中で語られる「伝承」が全くの嘘だったとしても、それで話が終わるわけではないということは記しておきます。仮に「伝承」が偽りの内容で確定したとすると、当然この「伝承」を最初に考えた人物(一人、あるいは複数人の中で自然に)が存在する事になります。その場合、ヒードランというポケモンを目にした大昔の人々が、その存在の出自について疑問を抱き、考えを寄せていた事実が見えてきます。また、同時にヒードランのような特徴を持ったポケモンと、霊山であり火山でもあるテンガン山と結び付ける価値観についても想像がつきます。現実の歴史学民俗学がそうであるように、仮に偽りが伝わっていたとしても、人々がそれを信じて伝えてきたという事実には価値があるわけです。もっとも、このヒスイ/古代シンオウ人の価値観に関しては「伝承」が本当だった場合にも少なからず影響はするのですが。

 

もう一点、今回に関してはリバースマウンテンと日照りの岩戸を無視し、ハードマウンテンと火吹き島について考えます。前者2つを考えるためにはシンオウ地方とイッシュ/ホウエン地方の物理的距離や、ヒードランが複数いるのかどうか、といった場合によっては本論よりも複雑な問題をクリアする必要があるためです。一応、今回の記事でもリバースマウンテンの個体にも当てはまるような説は存在するので、その場合は個別に付け加えます。基本的にはテンガン山からハードマウンテン/火吹き島、もしくはハードマウンテンから火吹き島への移動について考察しながらヒードランの生まれ故郷について考えていきます。

 

最後に、今回の考察記事は最終的な結論が出せないことも先に明言しておきます。理由は材料不足にあり、現在公式から開示されている情報からは今回の問題を解決できないためです。

長々と考察して結局結論を出さないというのは自分としても心苦しいのですが、のちのちこの問題を考えるにあたって現時点で分かっていることと、考えられる説をまとめることは意味がないとは思えません。ポケモンの考察が結論を出発点としがちな現状に逆らう意味でもこれを残したいと思います。

 

それでは、ヒードランの生まれ故郷について、考えていきましょう。

 

 

 

 

基礎情報-4つの火山+α-

まずは、基本情報としてヒードランが出現するマップと、今回重要になるテンガン山について確認していきます。確認なので、今回詳しくは扱わない第5世代以降の出現場所についても見ていきます。

 

テンガン山

シンオウ/ヒスイ地方の中央に聳える霊山であり、特殊な磁場が発生している点や、リッシ湖でギンガ爆弾が使われた際のミオシティ住民の台詞などから火山であると考えられます。頂上にはシンオウ神殿(もしくはその跡)が建てられ、アルセウスを頂点とするシンオウ神話と関係の深い山です。漢字表記は天冠山で、ドイツ語を除く他の言語でも冠を意味する名前が使われています。

LEGENDSアルセウスの図鑑説明によると、ヒードランはこの山の内部で煮えたぎる溶岩から生まれたとされていますが、ヒードランが実際に生息するハードマウンテンや火吹き島と距離があるのは先に述べた通りです。

 

ハードマウンテン

ヒードランが初登場した第4世代での出現場所は、シンオウ地方のハードマウンテンです。バトルゾーンの最奥にある活火山で、その火山活動は隣り合う227番道路に常に灰を降らせています。英語名はstark mountainで、他の言語でも基本的に「硬い」「険しい」「厳しい」といったニュアンスの名前で統一されています。

 

ハードマウンテンの神話的な立ち位置はバクのおじいさんから聞くことができます。が、この話を信じるうえでは、おじいさんがヒードランというポケモンの存在すら知らない点、そして火の玉からポケモンが生まれたことと、火山ができたことがどう繋がっているのかが分からない点に注意が必要です。

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また、ハードマウンテンはダイヤモンド/パール(BDSP)とプラチナで見た目に差があります。プラチナでは洞窟の入口付近で溶岩が露出しており、内部もほんのりと赤くなっています。

ダイヤモンド/パール/プラチナ共に、洞窟内の奥にある、線対象に岩が並んだ小部屋でヒードランが出現します。

 

 

火吹き島

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同じくシンオウ地方の、昔の姿であるヒスイ地方でのヒードランの出現場所は火吹き島です。群青の海岸の沖に浮かぶ孤島で、分かりやすいカルデラと火砕丘が特徴的です。中央火口丘から流れ出した溶岩は、湖沼のように島内部に湛えられていて尽きることがありません。水がないだけで形状や成り立ちとしてはシンジ湖やリッシ湖と変わらない、第5の湖になり得た火山島です。

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島キングであるヒスイウインディの領域でありながら、溶岩の流れが止まったあとは島の中央に「火口の祠」という洞窟が出現し、この内部でヒードランが調査隊員を待ち構えています。洞窟内は配置された岩や段差もなく、これまでにない殺風景さですが、泥団子がたくさん落ちてはいます。

 

 

 

リバースマウンテン

bw2でヒードランが出現する場所はリバースマウンテンという火山です。bw2はbwの2年後にあたるイッシュ地方が舞台になっていますが、bwではリバースマウンテンに行くことはできません。サザナミタウンと繋がったのはbw2時点でつい最近のことらしく、それ以前はヤマジタウンからしか行くことのできない山で、そのヤマジタウンもネジ山が崩れなければ主人公が訪れる必要はなかったので、ベルのように調査でも目的にしない限りは訪れる人の少ない秘境だと考えられます。

英名はreversal mountainで、他の言語でも逆転を意味する名前が使われています。後述するブラック2とホワイト2での火山内部の違いや、タウンマップ上での説明との違いに関係して名付けられていると思われますが、天井に足を付けて歩き回ることができるヒードランとの関係性も気になるところです。

 

リバースマウンテンの最大の特徴はブラック2とホワイト2による内部の違いです。ブラック2では地下水が流れ出る静かな内部空間を持っているリバースマウンテンですが、ホワイト2では溶岩が至るところで見られる危険な姿をしています。マップ上の説明もバージョンごとに異なります。

 

ヤマジタウンのポケモンセンターにいる山男からは、リバースマウンテンがハードマウンテンと同じ種類の火山だという話を聞くことができます。火山の種類というと、中学校の理科でも習う「成層火山」「楯状火山」「溶岩ドーム」という分類がまず思い浮かびますし、目で見える位置に溶岩が流れ、溶岩が流れ出した跡が洞窟として形を留めている点から前者2つのいずれかとみていいでしょう。

また、これは少し突飛な仮説になりますが、ブラック2とホワイト2での溶岩が見える/見えないといった違いは、ダイヤモンドパールとプラチナでのハードマウンテンの違いと合致します。どちらも同じ地方の同じ時期を舞台としたパラレルワールドであることから、ここでの「火山の種類」は「パラレルワールドによっては姿が異なる」という全く新しい分類で定義された可能性もあります。

他にも、火山の種類には火山の活動状態をもとに分類した「活火山」「休火山」「死火山」という分け方もあります。これは現在では定義が見直されつつある概念ですが、2012年当時ではこの分類で考えられていた可能性もあります。

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ブラック2、ホワイト2共に内部中央の小部屋にヒードランが出現します。といっても、初めてリバースマウンテンを訪れた際にはヒードランは出現せず、クリア後に行けるようになる18番道路で火山の置き石を拾ってから再度訪れると、テキストの表示位置から天井に張り付いていたと思われるヒードランが落下しながら出現し、戦闘になります。ネット上で度々ネタにされる「壁や天井を這いまわる」という図鑑説明がありますが、本編ゲーム内で実際に天井に張り付いている場面は実はここだけです(アニメ等の他媒体では見ることができますし、描画もされています)。

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ひでりのいわと

orasヒードランが出現するのは、ひでりのいわとという洞窟です。火山であるというような説明はありません(重要)。リメイク前のルビー/サファイアでは中央に日本晴れの技マシンが落ちているだけの、ダンジョンとも呼べないような小穴でしたが、リメイクによって内部が3層構造の空洞へと魔改造されました。名前に冠されている「ひでり」は、特にこのソフトにおいては言葉の意味以上にパケ伝を務めるグラードンの特性のイメージが強いでしょう。同じ効果を持つ日本晴れの技マシンが落ちていること、こちらも同じ特性を持つメガリザードンYのメガストーンが落ちていること、立地と名前から現実世界の日本神話において太陽神としての側面を持つ天照大神が身を隠した天岩戸がモデルと考えられることなどから、「太陽」との繋がりが非常に強いマップなのですが、ヒードランには「火山」の特性こそあれ「太陽」と関係するようなテキストはこれまでありません。ウルガモス等の方がまだ出現したときに違和感がないレベルなので、ここでヒードランが出現する理由はかなり謎に包まれています。

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ヒードランと戦闘になるのは最深部にあるフーパの輪っかに手を入れた後です。なので厳密にはヒードランがいるのは輪っかの繋がった先の世界、ということになり、ヒードランがひでりのいわとに生息する、という言い方は正しくありません。しかしながら、ひでりのいわとを訪れた際に発生するアスナとのイベントでは、「珍しいポケモン」が昔からいたことが示唆されています。洞窟内の野生ポケモンズバット系統しかいないため、ここでの珍しいポケモンとはヒードランのことで間違いないと考えられ、その場合はリングの出現がかなり昔ということにもなります。また、リングのある小部屋は温度が高くなっていて輪っかの先にいるヒードランの影響を少なからず受けています。アスナの言う通り昔からヒードランの影響を受け続けてきたのであれば、生息地のひとつとして考えてもいいかもしれません。

なお、ひでりのいわとはリメイク前、いかにも何かありそうな立地と名前にも関わらず何もないことから、特定の道具を使用したり、動作を行うことで伝説/幻のポケモンが出現するのでは、といった噂の絶えない場所でした。アスナの台詞はそういった当時の噂を揶揄しただけの可能性もあります(oras当時のゲーフリはそういうことしそうな雰囲気ある)。

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また、輪っかが浮かぶ小部屋には4つの岩が等間隔に並んでいます(配置はハードマウンテンのものとは異なります)。

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その他のヒードランの出現場所

7世代ではウルトラスペースに、8世代ではマックスダイ巣穴にヒードランが出現しますが、ここでは特に大きなイベントもないため特に書くことも考察する余地もありません。一応、マックスダイ巣穴の入り口にいるピオニーは「火山」や「火山の置き石」ではなくヒードランについて直接言及している珍しい人物です(内容は個人の感想程度ですが)。

 

また、ヒードランが出現しないソフトであるXYにも、ヒードランについて言及するNPCミアレシティ・ジョーヌ広場にいることもここの他に書く場所もないので記しておきます。ヒードランが生息しない地方の一般人であっても、ヒードランの鳴き声や分類まで知ることができる環境であることが分かりますね。

ちなみに「ジョーヌ」は「黄色」を意味するフランス語です



 

説1 ヒードラン爆進!:神話パワーで歩いて到達説を検証

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では、実際にヒードランがテンガン山からどのように移動したのか考えてみることにします。

 

まず、歩いての移動が困難であることを記しておきましょう。テンガン山があるシンオウ地方本土とハードマウンテンのあるバトルゾーン、また群青の海岸と火吹き島の間には海が広がっており、移動にはここを渡る必要があります。ダイヤモンド/パール・プラチナでは波乗りではたどり着けない距離であり、LEGENDSアルセウスにしても相当の深さがあります。

ポケモン・たまごグループが水中ではないポケモンの多くは基本的に遠泳能力はありませんし、ほのおタイプのヒードランもこの例に当てはまるはずです。伝説のポケモンであるヒードランだとしても、歩いて海を渡るのは困難でしょう。火山に関係した権能を有する伝説ポケモンの例だと大地を押し広げるグラードンであれば渡れなくもなさそうですが……

アニメとゲームの話を混同するのは危険ではありますが、『ポケットモンスター神と呼ばれしアルセウス』では実際にヒードランが水の塊の中で身動きが取れなくなる描写がありました。さすがに伝説のポケモンだけあって、苦しみながら暴れたりすることもなかったので、耐えるだけなら水中も問題ないのかもしれません。

 

歩いて移動説にはもうひとつ、「昔はシンオウ地方の地形が違っており、ハードマウンテン/火吹き島が地続きだったので歩いて渡ることができた」という可能性もあります。事実、群青の海岸・帳岬の付近はDPtの時代と比べてかなり地形が変わっており、近年でも大規模な地形の変化が起こっていることが分かります。この場合だと特に否定できる材料はないので、可能性としては残ります。

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せっかく可能性が残ったので、地形が変化する原因についても少し考えてみます。まず、現実世界における地形の変化としても、ヒードランと関係する要素としても真っ先に考えられるのは火山活動による変化でしょう。噴出物によって陸地が広がったり、マグマだまりが落ち込んで土地が窪んだりもします。結局のところヒードラン自身に火山活動を操る力があるのかは分かりませんが、仮に火山活動で地形が変化し、その中心に移動するヒードランが居合わせるのを見た人物がいたりすれば、火山を操っているように見えるかもしれません。

次に考えられるのは地殻変動でしょうか。DPtの地下通路の区割りとLEGENDSアルセウスのマップには共通性がある程度の共通性がありますが、群青の海岸は例外的に3つの地下通路のエリアが存在する特異なマップです。これは地中の岩盤やプレートといった要素が複雑であるとも考えられ、群青の海岸が隆起や沈降が起こりやすい場所であることへ繋がります(帳岬の地形とか明らかだし……)。これとLEGENDSアルセウス・DPtのマップ比較から、帳岬がポケモンリーグと224番道路になったとするならば、マップの北東部分はシンオウ本土から離れていくような動きをするはずです。であれば、LEGENDSアルセウスの時点で本土と距離がある火吹き島も、少し前までは陸続きだった可能性が出てきます。まあ火吹き島のカルデラがあそこまで綺麗に残っている以上、陸続きだった当時の火吹き島はカルデラができる前でしょうし、今と形はだいぶ異なっていたはずですが。

 

また、ポケモン世界の出来事ですから、ポケモンの力による地形の変化も選択肢に入れておくべきでしょう。バンギラスなどは図鑑の説明でも周囲の地形を変えてしまう力があることが記されていますね。夢のある説ですが、群青の海岸の出現ポケモンにはそのような強大な力を振るう一般ポケモンは生息していません。おそらくこれが可能な唯一の例が戻りの洞窟にいるギラティナ(+噴火の権能を持っていた場合のドラン)ですが、あんな目にあった後の彼が地形を変化させるほど暴れ、そしてその事実がDPtの時代に伝わっていないとは少し考えにくいです。

最後に、ポケモン世界における地形変化の常連、隕石くんについても一応考えます。ジャイアントホールやワイルドエリアの形成に関わり、ホウエン地方を滅ぼしかけたご存じ隕石くんですが、シンオウ地方でも帳岬と響きを同じくするトバリシティに落ちてきています(なんと4つも)。ヒスイの冒険では隕石のいの字も出てこないため、落下はLEGENDSアルセウスの時代とDPtの時代の間、ということになり、一見割と有力な説のようにも思えます。しかしながら、送りの泉の南に位置する帳岬と、北西に位置するトバリシティとは実は少し距離があります。むしろヒスイの時代のトバリシティの位置は霧の遺跡付近が妥当で、ここに隕石が落ちても群青の海岸にはあまり影響はないでしょう(影響が出るくらいの衝撃があったら帳岬が千切れる程度の変化では済まないので)。隕石くんは関係がなさそうですね。

 

説1のまとめとしては、ヒスイよりもさらに前の時代、火山活動や地殻変動によってバトルゾーンや火吹き島と本土が繋がっていたなら歩いて移動できなくもない、といったところでしょうか。

仮定要素が多すぎて判然としませんが、可能性としては捨てきれない感じです。

 

 

説2 ヒードランのあなをほる!:地下移動説を検証

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次に、歩いて行けない場合は海の底のさらに下、地面の中深くを通っていけばいいんじゃない?という地下移動説を検証します。

図鑑説明から分かる数少ないヒードランの生態のひとつに「火山の洞穴に生息する」というものがあり、「壁や天井を這い回る」という有名な説明文からも、ヒードランが基本インドア系であり、洞窟とは切っても切れない関係にあることが分かります。

シンオウ地方よりも細かな地形が分かりやすいヒスイ地方に目を向けてみると、テンガン山と火吹き島の間に位置する群青の海岸は起伏の激しいマップで、帳岬なんかは海面すれすれの場所にいくつもの通り道ができています。火山と火山を結ぶ位置、という意味でもこのヒードランの通り道にあたるマップの地下には溶岩の流れ出した跡だったり、地殻変動によってできた洞窟があっても不思議はありません。テンガン山と群青の海岸を結ぶとなると洞窟は現実離れした長さになりますが、世界には全長600㎞を超える洞窟もあるらしいので、ありえないと言い切ることもできません(なお、火山性洞窟に限定するなら現在の最長はカズムラ洞窟の60kmらしいです。シンオウ地方や天冠の山麓-群青の海岸間の距離が分からないため何とも言えませんが、仮にシンオウ地方が現実の北海道と同じ大きさだとすると少し長さが足りません)。

 

この説の名前にもなっているように、ヒードラン自身が穴を掘りながら進み、火吹き島やハードマウンテンに到達した可能性についても考えてみます。確かにヒードランは洞窟からの脱出にも使える技「あなをほる」を覚えることができます。しかし、これは技マシンを使用した場合のみで、事実技マシンから「あなをほる」の姿がなくなったSM、USUMではヒードランは「あなをほる」を覚えることができません。メタ的な話になりますが、ヒードランにとって重要な意味を持つ技に対して、このような扱いがされるとは考えにくいですね。

余談ですが、手足が土砂を掻き出すのに適していない付き方をしているヒードランが、実際に「あなをほる」を使う際には顎を使うと考えています。「あなをほる」の扱いとは対照的に、ヒードランのレベル技には「かみくだく」「ほのおのキバ」など顎を使うものが多く存在し、ヒードランがデザインされる際に攻撃手段として顎が重要である、という設定があったと思われるからです。ポケモンGOで基本技に設定されている「むしくい」も顎の形状から着想を得ていると考えられます。

 

ところでシンオウ地方で地下の移動、というと地下通路を思い浮かべた方も少なくないと思います。しかしながら、シンオウの大部分が位置する中央の地下エリアと、ハードマウンテンが位置するバトルゾーンの地下エリアは地下通路が繋がっておらず、移動することはできません。また、そもそも地下通路を最初に掘り始めた地下おじさんがまだ存命であることから、ヒードランが移動した時代に地下通路があったとは考えられません。

ちなみに、BDSPの地下大洞窟で新たに追加されたポケモンの出現する空洞に目を向けてみると、この2エリアが接近する群青の海岸付近にはマグマの露出する「溶岩の空洞」が多く配置されており、この辺り一帯が火山活動の活発な場所だとする前説の裏付けになっています。

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説2のまとめとしては、群青の海岸地下に巨大な天然の洞窟があった場合、ヒードランは地中を通ってテンガン山から火吹き島・ハードマウンテンへの移動は可能だ、という感じになります。

仮説としての欠点はないように見えますが、現状そのような巨大な洞窟の存在は本編では語られていない訳なので、実際にこの説が正解だったとしても拍子抜けしてしまいますね。可能性はごくごく薄いでしょう。

 

説3 ヒードランのダイビング!:溶岩遊泳説を検証

ヒードランの炎タイプとしての特性を活かした溶岩遊泳説を見ていきます。

ポケモンの中にはマグマに触れても大丈夫どころか、入っても平気なポケモンがいます。マグマに浸って傷を癒すファイヤーや、体を修復するマグカルゴがその例で、マグマのような血液が体を流れるというマグマッグ系統と同じ特性を持つヒードランも超高温に耐えられる可能性があるかも、と考える人がいるかもしれません。仮にマグカルゴと同じ程度の体温(本当か疑わしいが1万度らしい)を持っていた場合、火山の下のマグマ溜まりや、もしかすると地殻の下のマントル層を移動できる可能性すらあり、同じ火山どうしであるテンガン山とハードマウンテン、火吹き島、場合によってはリバースマウンテンまで地球の奥深くを通ることで移動できるでしょう。

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これは一見全ての移動手段を解決してくれそうですが、残念ながらそう簡単にはいきません。理由は明確で、ヒードランに完全な耐熱性がないからです。プラチナの図鑑説明を見てみましょう。

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ヒードランの金属部分が鋼鉄だとすると、熱による変化を無視しても約1500度を超えると溶融が始まります。マントルの上部は1000度程度ですが主成分は岩石なので移動は難しく、移動ができるような溶融状態のマグマがある(可能性のある)下部は約5000度以上とされています。ヒードランが鋼の体を保とうとする限り、移動はできないと考えた方がよさそうです。

 

なお、現在のヒードランの体は既に一部が溶けてしまった状態です。もし溶けきるよりも早くマグマの層を移動することができたなら、マグマの層を通ってきたために現在の姿になっている、という逆説的な仮説も考えられます。まあヒードランはそんなに速くないですけど、鋼鉄100%のときのステータスは未知ですからね。

 

説3のまとめとしては、地中のマグマを移動手段として考えるのは難しい、という結論になります。残念!

 

 

説4 ヒードランそらをとぶ!:飛来説を検証

陸路、海路と来たので次に考えるのは空路です。バクのおじいさんの話に戻ると、時間と空間が混ざり合ってシンオウ地方ができたときに火の玉がこぼれ出た理由が少し引っかかります。神話の話なので案外特別な理由はなかったりするかもしれませんが、「心」の存在や時間も空間、反物質、知識感情意志といった概念的なものを司るシンオウ神話の、特に重要な創世の部分で急に「火の玉」が単体で登場するのにも違和感があります。

では、「シンオウ地方ができたとき」を神話的な創世と捉えず、テンガン山の火山活動と捉えるならばどうでしょうか。「こぼれ出した火の玉」は噴出物を意味し、わざわざ「玉」という形状に限定している以上、流れ出した溶岩などではなく、噴石などの物体を指すと考えられます。バクのおじいさんの話が正しかった場合は火の玉=ヒードランなので、テンガン山地下で生まれたヒードランが噴火の際にバトルゾーン方面へ発射され、空を飛んでやって来た、という仮説が生まれます。この説はどうでしょうか。

これに関しては、単純にヒードランほどの重さのポケモンが、火山の噴火というエネルギーによって海を超えるほどの距離を飛べるのか、という点だけ調べればいいので検証は難しくなさそうです(前提からして神話的なシンオウ地方の誕生の否定から入っているので、神秘溢れるシンオウとはいえ超自然的な例外をあまり考えなくてもいいはずです)。

「火山噴出物 飛距離」とかいう適当なワードでぐぐったところ、「火山災害に係る検討について」という国土交通省のページがヒットします。ありがたいことに複数人の研究から過去の噴石の実例が書かれていて、ここによると噴石の平均到達距離は数㎞程度で、例外的に距離があるものでも10㎞を少し超える程度であるとのことでした。サンキュー国交省

ここでは最大の飛距離を記録した噴石の大きさや重さについて書かれてはいませんが、基本的に重い方が飛距離は落ちるはずなので、一般的な噴石よりもはるかに重いヒードラン(430㎏)がこの距離を超えることはないでしょう。実際の距離と縮尺が不明なシンオウ地方といえ、テンガン山とハードマウンテン/火吹き島までの距離が10㎞以下だとはとても思えません。せっかく考えはしましたが、飛来説は無理があるように思われます。

 

ちなみに、シンオウ地方ができたときの描写は「シンオウのしんわ」などでも知ることができます。しかし、プレート裏側の説明文や「はじまりのしんわ」ではアルセウスによって生み出されたのはあくまで「宇宙」や「世界」であり、これが即ちシンオウ地方そのものを意味するのかどうかは定かではありません。テンガン山の火山活動によってシンオウ地方ができたとするならば、できた当時は人類が観測できないほど大昔でしょうし、仮に観測できていたとしても噴火の規模からして当時のシンオウに生きていた人が生き残れたかは分かりません。

一方で、バクのおじいさんがいるサバイバルエリアは、DPtで訪れる場所とはいえ扱い的にはシンオウ地方の外であり(バトルゾーンにはシンオウ地方では見られないポケモンが生息する、等シンオウではない旨の台詞がある)、シンオウ地方で噴火などの災害が起きた場合にはファイトエリア等から見ることができた可能性があります。もしかしたらシンオウの誕生を実際に見た人物の言葉が一部受け継がれ、それが「火の玉」という本土の神話にはない要素が生まれた原因なのかもしれません。

 

補足:シンオウ神話と「火の玉」というキーワードから「ひのたまプレート」を連想したトレーナーも少なくないと思います。プレートはアルセウスが宇宙創造(仮)したあと、世界が作られ眠りにつくまでの間に、「巨人たち」を倒してその力を封印したものなので、ある意味では「シンオウが作られたときにこぼれ出した火の玉」と状況が一致します。ひのたまプレートの落ちている場所がハードマウンテン内部であることも興味深いポイントです。さすがに今回のテーマからは脱線しすぎるので、最後の「まとめ」でアルセウスヒードランレジギガスの対立について少し触れる程度にします。

 

 

説4のまとめとしては、巨大なエネルギーを伴う火山噴火でも、ヒードラン(430㎏)をあの距離飛ばすのは無理があるだろう、ということになります。残念!

 

 

説5 ヒードラン爆誕:現地誕生説を検証

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最後に、前提からしてズルい気もしますが、ヒードランが今いる生息地で誕生し、そのまま動いていない、という説についても考えていきます。

まず、この仮説は、LEGENDSアルセウスの図鑑説明にあるテンガン山生まれのヒードランと、ハードマウンテン/火吹き島のヒードランが別個体であることを前提にしています。これまでスルーしてきましたが、ヒードランが複数体いるならば当然「テンガン山で生まれた伝承もあるけど、火吹き島にもいたよねー」で話は終わりです。伝説のポケモンが複数体いるのかどうかについては議論され始めてから長い問題ですが、ヒードランに関しては(少なくともシンオウ地方の禁伝やUMAたちよりは)、複数体いる可能性がかなり高い方であるとされます。バトル施設を含まなくても、初登場のDPtでもハードマウンテンの個体とクロツグの手持ちとして2回は登場しますし、bw2でもリバースマウンテンとワラキアの手持ちとして2回登場します。また、リバースマウンテン内にいるトレーナーの台詞にはハードマウンテンにヒードランがいることを知っているようなものがあり、そのうえでリバースマウンテンにもヒードランがいるので最低でも3匹くらいはいそうです。

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LEGENDSアルセウスの図鑑説明に戻りますと、ヒードランが生まれる環境(条件?)の一つに、煮えたぎる溶岩が挙げられます。ある程度の規模を持った火山であれば、もしかすると溶岩の中からヒードランが生まれてくることが割とよくあることなのかもしれません。非生物に魂のようなものが宿ってポケモン化する例は少なくなく、ヒードランが地中深くの溶岩や鉱物から生まれたポケモンだった場合も不思議はありませんし、地球という母なる星の奥深くで生まれたポケモンならば、神話的な出自を持たない自然発生のポケモンだとしても、伝説のポケモンとしての力があるのは納得できます。さらに、この仮説ならばテンガン山、ハードマウンテン、リバースマウンテンどこにもヒードランが存在する理由を説明できます。

 

説5のまとめとしては、ヒードランが複数体いるならば「テンガン山生まれのヒードランと他の個体は別の個体!」ということで移動にまつわる問題を全てクリアできる、という感じでしょうか。

(タマゴで増えない)ポケモンの発生(誕生)という、本編でも滅多に扱われない点で着目したものなので、反論らしい反論は用意できず、結果としてかなり有力な説にも見えます。もちろんこの説が正しい場合はアルセウスを頂点としたシンオウ神話体系とヒードランは無関係である可能性が高くなります。

 

 

 

番外編 ヒードランのテレポート!:万能移動手段ウルトラホールとフーパリング

書いておかないと突っ込まれそうな気がするので一応書きますが、題以上の内容はありません。ウルトラホールを経由すればヒードランは自由に移動できますし、フーパのリングでも同様です。というか、既にorasとUSUMで前例があるので確実に否定できる手段が存在しません。しいて言うなら、これまで取り上げてきたテンガン山やハードマウンテン、火吹き島、リバースマウンテンに輪っかや穴のようなものはありません。でもホウエン地方のように、パラレル世界では急にリングが出てくるかもしれません。さすが万能、こりゃだめだ反論できません。

 

 

おわりに(まとめ)

まとめ

これだけ説並べておけば1つくらい正解あるだろ~~~、あるといいな。

5つの説を勝手に立てて、それぞれ可能かどうか検証してきました。結果的には「ヒスイ以前の時代、シンオウ本土とハードマウンテン/火吹き島は陸続きだったため移動でき、その後地形が変化した(説1)」「テンガン山で生まれたヒードランとハードマウンテン/火吹き島のヒードランは実は別個体で、それぞれがその火山の地中深くで自然発生した(説5)」が有力ですかね。

 

ところで(そもそも移動の理由について)

ところで、ヒードランが移動した手段については考えてきましたが、そもそもなんでテンガン山で生まれたヒードランが北東の海の外に行くことになったのでしょうか。この理由・動機についてはこれまで触れてきませんでした。

まず、ヒードランが自分から北東へ向かう理由についてですが、驚くほどありません。いつ、どのように移動したのかが分かっていないので、推測できる資料がないのもありますが、強大な力を持つ伝説のポケモンであるヒードランが、わざわざ住む場所を変えるというのは何か理由があるはずですが、ヒードラン自身にはそのような理由は全く無い訳です。

 

自発的な理由がないならば、ヒードランが動かされた、という線はどうでしょうか。ヒードランほどのポケモンを生まれた地から動かすことができる存在は限られています。1つは天変地異、もう1つは別の伝説のポケモンです。前者の場合は、天災によって避難したと考えるよりは、テンガン山が活発な火山活動をやめてしまったため、ヒードランはより住みやすい(火山活動が活発な)北東へ渡る必要があった、と考える方が自然でしょう。本当に引っ越しするくらい火山が恋しかったのかについては、ヒードランに聞いてみるしかありませんが……。

 

後者に関しても考えてみましょう。シンオウに住まう別の伝説のポケモンと言えば、アルセウスを頂点とする神話体系か、レジギガスを筆頭とする巨人たちが思い浮かびます。ヒードランは彼らとの戦いに敗れた結果として、火吹き島に流されたりしたのでしょうか。

あまり有名ではありませんが、ヒードラン自身も「火口の祠」で祀られていた信仰対象です。なのですが……火口の祠自体は「祠」の名前だけを辛うじて残したただの洞窟で、LEGENDSアルセウスの時代では既に信仰は残っていないと考えられます。

ヒスイ地方ではアルセウスを頂点とするシンオウ神話の遺跡がまだかなりの数残っていますが、それでも神話の中にヒードランが登場することはありません。これはレジギガスドータクンといった信仰を受けていた別のポケモンに関しても同様で(ギガスなんかは明確に敵として出てきますし)、ヒードランの信仰はアルセウスとは反発するものだったのかもしれません。

ヒードランが生まれたテンガン山は知っての通り、シンオウ神殿やカミナギ寺院が残る、アルセウスにとって重要な場所であり、ここに別の神話体系のヒードランがいたとしたらアルセウス(もしくはアルセウスを信仰する古代シンオウ人)は邪魔に思った可能性は十分にあります。シンオウ神話の創世としては、「アルセウスが宇宙を想像→巨人を倒してプレートに→ヒードランを追い出し(火の玉がこぼれ出す)辺境の島へ→空いたシンオウ地方に神殿築く」みたいな流れになるのでしょうか。ヒードランを応援する身としては少しかわいそうなところですが、アルセウスVSヒードランが実際にあったとしたらドリームマッチみたいな感じがあって少しわくわくもしますね。アルセウスが来る前はレジギガスVSヒードランとかもあったのでしょうか、これはこれでライバルVSライバルのドキドキ感があります(適当)。

 

 

おわりに

最後に、今回の記事を書くにあたって、一番時間を要したのが最初の基礎情報のおさらいでした。自分の頭の中では「たしかこんなだったよな……」という記憶があり、これを元に5つの仮説を考えて記事を書き始めたのですが、作ってるうちに前提が間違っていたらやばいな……となり、急遽ソースを探すことになりました。ストーリーの流れや図鑑説明、マップ説明などは適当な実況プレイなんかを見ればすぐに確認できたのですが、ストーリーに直接関与しない一般トレーナーの戦闘前台詞や、もう一度聞くことのできない地下おじさんの初対面時の台詞などは、なかなか見つけることができず、結局実機で確認し直しました。

せめて、自分の好きなヒードラン関係のものだけでも、関連する台詞やテキストを集めたデータベース的なものがあると、もっといろいろ書きやすくなるな……ほしいな……と思った次第です。外伝についてもまとめたいな……時間ないな……

 

 

それでは。