さっとらです。
ポケモンXYの簡単な考察です。
先日の記事でヒードランの故郷について考察しましたが、その途中でポケモンXYのミアレシティ・ジョーヌ広場にいるNPC(おとなのおねえさん×2)の会話について少し触れました。
Twitterでこれを呟いたところ微妙に反響があり、せっかくの機会なのでジョーヌ広場について考えてみようと思った次第です。
— ぽよぽよ (@syutsugun_miss) 2023年2月22日
知らない人のために一応説明しておくと、ジョーヌ広場はミアレシティ北東に存在する広場で、外側へ向かえばノースサイドストリート、横方向に進むとイベールアベニュー、反対側に進むと川に面しています。名前の意味は「黄色」を意味するフランス語で、広場の中央には黄色い石柱が建っています(ミアレシティに存在する他の4つの広場も同じ構造です)。近くの建物としては広場のすぐ傍にあるトロバの家、そしてイベールアベニューからジョーヌ広場へ入る小道の角にはカフェ・パルトネールがあります。広場では2人の人物(2人とも大人のお姉さん)が向かい合って話しており、この台詞がツイートの画像にあるものです。
台詞についても一応補足します。台詞の「かこうポケモン」とはもちろん伝説のポケモン・ヒードランのことで、「ごぼぼぼ!」はヒードランのテキスト上の鳴き声「ごごぼっ ごぼぼぼ!」を意識したもので確定させていいでしょう。英語版ではヒードランの鳴き声「Gwogobo gwobobobo!」に対して、ごぼ子の声真似は「Hohohoho!」で表現されています。
ジョーヌ広場についての情報はおそらくこれで全てでしょう。なんてことはないただの広場であり、そしてそれ故にヒードランの鳴き真似をしたくなる理由がさっぱり分かりません。はたしてゲーフリはこの台詞と場所から何を我々に伝えたかったのでしょうか。というかそもそも本当に何らかの意味がある場所なのでしょうか。
今回はこの謎について、広場の名前、広場の位置、トロバの姉、プラターヌ博士といったな キーワードと繋がることで探っていきたいと思います。そんなに長くならないよ。
- 1.名前からジョーヌ広場を考える-ヒードランは電気ネズミの夢を見ない-
- 2.地理的条件からジョーヌ広場を考える-ヒードランの鳴き声と広場の立地-
- 3.台詞の構成からジョーヌ広場を考える-僕らの作った図鑑の行方-
- まとめ:ミアレシティの特徴から見るジョーヌ広場の役割
- おわりに
1.名前からジョーヌ広場を考える-ヒードランは電気ネズミの夢を見ない-
まずは物語(台詞2つのみ)の舞台であるジョーヌ広場から、2人の会話の意図を考えてみましょう。
最初に考えるのは名前との繋がりです。前述の通り「ジョーヌ」は黄色を意味するフランス語です。皆さんは黄色+ポケモンの組み合わせからヒードランを連想できるでしょうか、自分には難しいです……というかそもそもピカチュウの壁が高すぎる気がします。むりやり共通点を引っ張り出すとするなら、ヒードランの背中には黄色い斑点が存在しますが、これのことだけを指しているとはとても思えません。後の作品であるusumのウルトラワープライドでは、黄色のウルトラホールに飛び込むとヒードランのいるウルトラスペースに行くことができますが、これはさらに繋がりは薄いでしょう。
海外版ではどうでしょうか。そもそも「ジョーヌ」がフランス語である以上、カロス地方のモデルとなったフランスならではのジョークが潜んでいるかもしれません。試しにTwitterで「jaune plaza」と「heatran」「lava dome」を合わせて検索してみると、
残念ながら日本人と同じく困惑しているツイートしか出てきません。「追加コンテンツでXYにヒードランが出ると思ったが、アテが外れた」のような反応もあります。
海外の方の考察動画もありますね。ジョーヌ広場研究ではこの方が第一人者と見ていいでしょう。
どちらにせよ、広場の名前と会話の内容はあまり関係がなさそうです。
2.地理的条件からジョーヌ広場を考える-ヒードランの鳴き声と広場の立地-
次に、ヒードランを連想させるような名前以外の要素について考えていきます。
2人の台詞から考えてみましょう。ヒードランについて話すNPC自体は、過去作品においてヒードランの出現場所にいないこともありません。しかしながら、鳴き声に焦点を当てたテキストは後にも先にもここだけでしょう。また、かこうポケモンというヒードランの分類について触れている点も珍しいです。「ヒードランの鳴き声」「ヒードランの分類」、この2点が謎の会話の意味と目的を突き止めるカギになりそうです。
まずはヒードランの鳴き声についてから。ジョーヌ広場が「ごぼぼぼ!」という音が聴こえてくるような場所であれば、ヒードランの鳴き真似をしたくなるという感覚も(際どいところではありますがギリギリ)分からなくもありません。「ごぼぼぼ!」という擬音は溺れるときにも使いますが、液体が噴き出したり激しい動きを伴う際にも使われがちで、おそらくヒードランの鳴き声もマグマが噴き出すようなイメージで作られたと思われます。さて、ジョーヌ広場の周囲に目を向けてみましょう。ジョーヌ広場は前に述べた通り、イベールアベニューの反対側に向かって進むとミアレシティを貫く川に面しています。そして、ごぼ子とサーバルちゃんが会話している場所は、ジョーヌ広場と川とを繋ぐ路地の入り口近くにあたります。
残念ながら、ミアレシティを流れる川については情報が少なく、ゲーム画面からでは激しく音を立てて流れているのかは分かりません。また、同じミアレシティの広場でも、ローズ広場であれば、その真下を川を流れているのですが、ジョーヌ広場の場合は一応路地を挟んで近くにある、というだけなので、水の音が聴こえるかどうかは厳しいかもしれません。しかしながら、川の音からヒードランの鳴き声を連想した、という説自体は明確に否定できる根拠がある訳でもないので、これはいったん保留にしても良さそうです。
Amazon Prime Videoで独占配信中のアニメ「ポケットモンスター 神とよばれし アルセウス」
— アニメ「ポケットモンスター」公式 (@anipoke_PR) 2022年2月15日
もう見ましたか⁉
暴走した #ヒードラン を止めるためのサトシたちの作戦とは❓
みずタイプとなった #アルセウス は力を貸してくれる…⁉
気になる結末はこちらから🎵https://t.co/Z4RCDpInkS#アニポケ pic.twitter.com/rJMeKApbNM
ちなみに水に溺れるヒードランは『ポケットモンスター 神と呼ばれしアルセウス』で見ることができます。ヒードランがヒロイン演じてる可愛い話なので未視聴の方はぜひ!ごぼぼぼ!
3.台詞の構成からジョーヌ広場を考える-僕らの作った図鑑の行方-
最後に、2人の会話の内容を深掘りして、ジョーヌ広場について考えてみます。
会話の内容のうち、鳴き声については前項で地理的条件と併せて見てきたので、残るヒードランの「分類」にも焦点を当ててみましょう。そもそもポケモンの「分類」という概念自体、ポケモン世界では確認されていない生き物の名前等が使われているなど謎の多い概念なのですが、今回の考察とはあまり関係がないのでここでは詳しく触れません。今回の問題はヒードランという秘境に生息する伝説ポケモンの分類(+鳴き声)をミアレのモブが知ることができるのか、ということです。
ポケモンの分類について話すNPCはかなり限られており、多くの方はその分類についてポケモン図鑑から得ていると思います。カロス地方のポケモン図鑑は3種類ありますが、ヒードランは残念ながらそのどれにも登録されていません。ジョーヌ広場の2人は国外の図鑑を読んだか、読んだ人物からヒードランの話を聞いて知識を得たのだと考えられます。
さて、「ミアレシティ」「ポケモン図鑑」という2つのキーワードから、ミアレに位置するプラターヌの研究所を想起した方も多いでしょう。プラターヌ博士はXYにおいて主人公に最初の3匹をくれ、ポケモン図鑑の完成を託す存在なのですが、それまでの作品と異なり、その研究所は最初の町とはやや遠い、地方の最大都市であるミアレシティに位置します。
5世代以前の作品では、ポケモン博士は最初の町か、次の町に研究所を構えてきているので、ジムバッジを手に入れたあとに研究所で初めて博士と対面する、というのは当時としてはなかなか革新的です(前作があるとはいえbw2のアララギ博士も最初は通信でのみやりとり→最後に研究所を訪れる、という流れだったので、これを継承しつつ変化させたと捉えることもできます)。制作サイドからしても、プラターヌ博士が最初の町ではなくミアレシティに研究所を構えているというのは重要な役割があるように思えます。
とはいえ、プラターヌ博士の研究所がミアレシティにある理由について、詳しく分かるようなテキストはありません(ミアレは広いので自分が見つけてないだけかもしれません)。しかしながら、ゲーム内にテキストが無くとも、地方で一番の大都会に研究所を構えるメリットとデメリットは想像できます。メリットとしては人が多く、施設も豊富な都会では研究のための情報が集めやすいこと、デメリットとしては野生のポケモンを調査しにくいことが挙げられるでしょう。プラターヌ博士の専門はポケモンの進化ですが、中でもメガシンカに関しては野生ポケモンにはまず見られない現象であり、現象そのものの珍しさから情報の収集が重要であると考えられます。ミアレシティはプラターヌにとって研究をしやすい理想的な町と言えそうです。
ジョーヌ広場に話を戻しましょう。広場の会話からは、ミアレの一住民は遭遇する機会が無いに等しい伝説のポケモン・ヒードランの鳴き声や分類について彼女らが知っていて、なおかつ相手も知っていることを前提としたジョークを言えるほど、知識を身につけていることが分かります。これは、世界中から情報が集まる町としてのミアレシティの特徴を、私たちに示しているのではないでしょうか。
ジョーヌ広場の台詞の持つ役割についてはまとまってきましたが、役割だけを考えるならば、この台詞はミアレシティのどこで聞いても同じように思えます。この台詞がジョーヌ広場に置かれた特別な理由は果たして無いのでしょうか。この問題についても考えてみましょう。
ジョーヌ広場とポケモン図鑑、という観点において無視できない存在が広場の近くにあります。ポケモン図鑑の完成を目指して主人公と一緒に旅をした少年、トロバの実家です。
トロバの両親は子供をほったらかしての世界一周旅行で家を空けているらしく、建物の中ではトロバの姉から彼の話を聞くことができます。彼女によると、トロバは両親の影響もあって、旅に出る前から図鑑を片手にカロスを回ることを夢見ていたそうです。
トロバの姉の台詞からは、トロバが旅するのに憧れた理由は両親にあることは示されていますが、「ポケモン図鑑片手に」という部分がどこから来たのかは判然としません。
しかしながら、これとジョーヌ広場を結びつけるならばどうでしょうか。ジョーヌ広場の台詞からは、完成後のポケモン図鑑の情報がミアレの住民に広く共有されていることが分かります。これは博士の研究所内やポケモンセンター等の、トレーナーが集まる場所だけでなく、ミアレの全域でおそらくそうなのでしょう。であれば、トロバの憧れに影響を与えた要素として考えても不自然ではありません。
もしも「ごぼぼぼ!」の台詞がローズ広場をはじめとした他の広場だったならば、ミアレシティの一般人の教養の深さをプレイヤーに示すことはできても、トロバとは結びつきにくかったでしょう。この台詞がジョーヌ広場に置かれた理由を考えるならば、トロバの家と近い場所でこれを読ませることで、トロバがポケモン図鑑の完成に憧れを抱いたその背景について、我々にそれとなく想像させるためではないでしょうか。
話が少し逸れましたが、この項をまとめましょう。情報(博士の研究に役立つものから完成した図鑑の内容にいたるまで)が集まるというミアレシティの特徴をプレイヤーに示すテキストはゲーム内に点在し、ジョーヌ広場の会話もその一つと考えられます。会話の場所としてジョーヌ広場が選ばれた理由は、トロバの家が近いからであり、これによってミアレシティの特徴とトロバのキャラクター設定とが重ねやすくなっています。
台詞の構成から考えられるのはこれくらいでしょう。少しヒードランからは離れてしまいましたね。
まとめ:ミアレシティの特徴から見るジョーヌ広場の役割
3つの観点からジョーヌ広場の会話について考えてきましたが、結論としてまとめると
○会話の理由:ジョーヌ広場とヒードランには関係性がなく、かこうポケモンの真似をしたくなる理由は分からない(川が近いから、という可能性はある)。
○会話の目的:メタ的に考えるなら「情報が集まる町」としてのミアレシティのイメージを補強する台詞であり、同時にトロバの育った環境と彼の目標との繋がりを感じさせるスポットになっている。
といったところでしょうか。特に会話の目的については、我々が毎世代せっせと完成させているポケモン図鑑について、研究として世に出ている以上に、ポケモン世界に暮らす一般人の会話の中にまで浸透していることが伺えます。
ミアレシティは迷いやすいマップやフラダリラボの存在、進行不能バグなど負の側面はあるものの、そもそもは美しくスタイリッシュな光の側面が強いカロスの中心地で、その要素の1つには学問の中心地という側面も存在します(グリーンが留学しに来てたりもします)。ジョーヌ広場はこのミアレの光の側面の一端を担う場所と言えるでしょう。
おわりに
ヒードランとジョーヌ広場の繋がりを考察しようと思って書き始めたのですが、考えてるうちにいつの間にかマスダの夢が詰まったミアレシティの光に関する記事になってしまいました。
「ポケモン世界で暮らすなら、どの町に住みたい?」とは界隈でよく聞く質問の一つですが、研究者や趣味でポケモンの研究をしたい人にとって、ミアレシティは住みやすい町でしょう。1種類のポケモンに限定するなら別ですが、広い種類のポケモンが研究対象だった場合、カロスの中心にあるミアレシティはフィールドワークにも便利です(ついでに町もおしゃれですし)。
今回はジョーヌ広場に近いスポットとしてトロバの家を取り上げましたが、冒頭にも書いた通り、広場と近い場所にはカフェ・パルトネールもあります。
カフェ・パルトネールはイベールアベニューに存在するカフェで、すぐ横の裏路地からジョーヌ広場へと繋がっています(最初に来たときだけシードラ使いのトレーナー(おとなのおねえさんのカルーセル)がいる路地です。カルーセルは先日ポケマスの探偵イベントにも出てきましたね)。中ではプラズマ団の話をしている人物もおり、ここもまた多様な地方の情報が集まるミアレの特徴を示す場所の一つです。
カフェ・パルトネールはミアレ出版の編集長がボルケニオンにまつわる国造りの神話を聞いた場所でもあります。つまりカロス南西部のボルケニオンの風習に詳しい人物が出入りしているカフェという訳です。オシャレなカフェで伝説ポケモンの物語に思いを馳せる……これもポケモン世界で体験したいものです。
それでは。
完全な蛇足ですが、コーヒーメーカーでコーヒーを淹れる際には「ごぼぼぼ…」という音もしますね。スタイリッシュなミアレのカフェで使われているとは到底思えませんが……