幽洞の備忘録

ゲームやって思ったことかく。

ポケカから考察するヒードランの権能

お久しぶりです、さっとらです。

 

HOMEの連携がなかなか来ず、ゼロの秘宝までもまだ時間がある中、最近のポケモンの話題と言ったらレイドの不具合や公式大会の炎上など、マイナス方面の物が目立ってます。この炎上ブームの魁となったのがポケモンカードの高騰と転売問題だったと思います。

といっても、今回は別に炎上について物申したい訳ではなく、ポケカというゲームの外側にあるメディアを通して、公式が設定したポケモンのイメージについて考察できるのではないか?という記事になります(導入が最悪すぎるだろ)。

 

 

 

 

0.はじめに:ポケカから考察を行う意味

ポケモンカードのテキスト、ポケモンの技や特性(世代によって特殊能力だったりポケパワーだったりする)は、ある程度ポケモンの能力や設定に寄ったものになっています。例えば技の名前が原作ゲームでも存在し、実際にそのポケモンが使える技になっていたり、素早いポケモンは「にげる」に必要なエネルギーが少なくなっていたりします。

分かりやすい例はディアルガでしょう。ディアルガのカードテキストは(環境のインフレによって若干強くなっていきながら)、「相手のターンを飛ばす」「ポケモンを退化させる」といった、時間を司る権能をポケモンカードのルール内で表現したようなものとなっており、開発元がディアルガの「時間を司る」という設定を大事にしていることが伺えます。

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この場合は、我々と開発元のディアルガに対するイメージが近いように思えますが、逆にこの開発元と我々の認識が少しズレている例もあります。フカマル系統が良い例でしょう、原作におけるガブリアスの特徴をポケカに落とし込むとするならば、素早さと攻撃力の高さや、特性さめはだのカウンター性、あたりの表現がまず思い浮かびます。実際に、最近のガブリアスはスピードに関する言葉(ソニック、おんそくなど)を使った技が多いのですが、ポケカにおける初期のフカマル系統は、ガバイトの図鑑説明にある「鱗が薬になる」という表記から、回復に関するテキストが多くなっています。

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ガブリアスと聞いてまずヒーラーを思い浮かべる人は、自分の周りではまず多くないため(かなり主観的ですが)、これは開発元が想定しているガブリアスのイメージが我々とは少し異なっているということになります。

 

 

さて、ここまで開発元開発元と書いてきましたが、ポケモンカードの制作に携わっているのは他でもないクリーチャーズと株ポケです。よって、例え開発元のイメージと我々のイメージが異なっていたとしても、ポケカに表現されているポケモンの特徴は、「非常に公式寄りな組織が見立てた、そのポケモンの特に大事な能力」として見ることができます。

あくまでカードはカードの世界観であり、かつゲーフリの関わりが薄い点には注意が必要ではあるものの、これを元にすれば特定のポケモンに対する公式からのイメージについてより考えられるはずです。

もちろん、わざわざ「カードに時間を操作するテキストが多いから、ディアルガは時間に関係している!」みたいな結論を出しても意味がありません。この方法で考察を深められるとするならば、「作中で開示されてるデータが少なく、どんな能力があるのかいまいち分からないポケモン」の持っている特徴について考えるのが妥当でしょう。

 

今回はこの前提を元に、実際にポケカのテキストからポケモンを考察してみようと思います。ちなみに、肝心の「作中で開示されてるデータが少なく、どんな能力があるのかいまいち分からないポケモン」ですが、今回はヒードランを採用させていただきました(予定調和)。

 

 

 

 

 

 

 

 

1.前提:ゲーム本編で示されているヒードランの能力

まずは、前提としてゲーム本編で描かれているヒードランの特徴や能力についておさらいしておきます。「俺は本編のヒードランについてはなんでも知ってるヒードランマスターだ!」という人は飛ばしてもらって大丈夫です。

 

図鑑説明から見ていきましょう。ヒードランの説明文は全部で4つあります。

 

火山の 洞穴に 生息。十字の ツメを 食いこませて 壁や 天井を はい回る。(DP)

頑丈な 鋼の 体だが 自分が 発する 高熱の ため ところどころ 溶けてしまっている。(Pt)

マグマのように 燃えたぎる 血液が 体を 流れている。火山の 洞穴に 生息する。(HGSS)

テンガン山の 内部で 煮えたぎる 溶岩より 生まれしとの 伝承あり。 溶解した 鋼の体 得体が 知れず。(LEGENDSアルセウス)

 

被っている内容も多いので特徴をまとめると、

・爪を使って壁や天井に貼り付ける

・頑丈な鋼の体(溶けている)

・高熱を発する

・場所に関する記述:火山の洞穴にいる。溶岩から生まれた

こんな感じでしょうか。戦闘に関する描写は一つもなく、他のシンオウ地方の伝説ポケモンのような派手な権能を持っている様子もありません。「高熱を発する」については、ポケパルレ等で背中から手足にかけての赤茶色の部分を触ると「ジュッ」と音がして手が焼けることでも表現されています。

 

図鑑説明以外の描写についてもおさらいしておきます。といっても、ヒードランがストーリーに深く関わったシナリオは少ないです。特筆すべきはサバイバルエリアにある伝承でしょう。

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要約すると火山の置き石を動かすと、ヒードランが目覚め、ハードマウンテンが噴火する、という伝承です(真偽は不明)。ポケモン図鑑の説明ではヒードランと火山活動との関係性について全く触れられていないこととセットで覚えておきましょう。火山の置き石リバースマウンテンにもありましたが、こちらでは「石を動かすとヒードランが目覚める」という話だけが伝わっており、火山活動との関係は言及されていません。

 

 

ヒードランの能力について、原作での描写はこれくらいです(bw2やxy、oras、剣盾ではヒードランに関する台詞があるにはありますが、これ以上に新しい情報はありません)。大まかに特徴をまとめると、

①爪

②鋼の体(頑丈で、溶けている)

③高熱

④火山(噴火、マグマ等とそれぞれどういった関係なのかは不明)

となります。これらを頭に入れたうえで、実際にポケモンカードのテキストを見ていきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

2.調査・考察:ポケカにおけるヒードランのテキスト

ヒードランのカードはこれまでに34種類出ています。これらを一枚一枚見ていくのも面白そうですが、記事の趣旨とはズレてきそうなので、今回はテキストを大まかに分類した上でこれを集計して、ヒードラン全体の傾向としての特徴を見ていきたいと思います。

なお、34種類とはいってもカードのテキストがまったく同じものは1枚のみカウントする(同じ能力だがレアリティの異なるヒードランEX(RR)とヒードランEX(SR)や、ヒードランLv.X(破空の激闘)とヒードランLv.X(PROMO)はもちろん、タイプが異なるヒードラン(SM5+)とヒードラン(SM5S)についても1種類とみなします)ので、今回の集計対象になるのは19種類です。

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2-1.わざ・特性の名前から見るヒードラン

まずはヒードランのわざ・特性の名前について見ていきましょう。

ポケモンカードにおける「わざ」はゲーム本編の「わざ」とは似て非なるもので、(基本的に)1ターンに1度しか使えないという点はゲーム本編と同じですが、「名前」という点では大きく異なります。というか簡単に言うとポケカオリジナルのわざがめちゃくちゃ多いです(だからこそ、ゲーム本編では存在しないわざの名前から、ゲームでは知り得ないポケモンの側面が考察できると考えた訳なのですが)。

 

わざの種類は多くなりますが、1枚のカードに載っているわざの数は2つ、多くても3つであることがほとんどで、場合によっては1つということも少なくありません。そのためヒードランポケカでのわざを単純に集計しても、良いデータは得られません(得票数1のわざがあまりにも多すぎるため)。

そこで、今回はわざの名前を単語ごとに分解して、パーツとしての単語を集計する、という方法を採りました。例えば「マグマストーム」であれば、「マグマ」と「ストーム」に分けてそれぞれをカウントします。

分解した結果、単語かどうか怪しい語が出てきた場合はギリギリまで分解した上で、分解途中の語も集計します。ヒードランVMAXの「ダイバクネツ」の場合は「ダイ」「バク」「ネツ」「ばくねつ」の4つでカウントします。これは「バク」という語自体に爆発の意味合いが含まれていること、また「ばくねつ」という語を使う技が他にも複数存在するためこれらとの繋がりを考察できることが理由です。

それでも一票しか入らない語が多すぎるので、「ヒート」と「ねつ」など、意味が近い語は一つにまとめました。もちろんポケパワー・ポケボディーも含みます(ヒードランはDP以降に初登場したため特殊能力はありません)。

 

 

集計結果は以上の通りです。1番多いものから順に見ていきましょう。

最も多かったのが熱を意味する「ヒート・ねつ」です。ポケモン図鑑の説明でも、ヒードランはその特徴として高熱を発すると書かれているのでこれは納得です。そもそもヒードランの、名前の由来の説の一つとしてheatが挙げられており、このポケモンがデザインされるうえで熱が重要な要素であることは間違いなさそうです。

とはいえ、これはゲーム本編からだけでも明らかだったことなので、別段語ることもありません。また、熱という語自体はヒードラン以外のポケモンカードでも、ほのおタイプのポケモンのテキストにはよく現れる言葉なので、ポケカにおけるヒードランの特徴=技名に熱が多い、とは言えません。

ヒードランLv.Xは1枚で「ヒート」と「ねつ」がどちらも入っています。4世代時点のカードなので、やはり当初から熱とは切り離せない関係と言えそうです

 

 

2番目に多かったのは同率で「ほのお・かえん・ひ」と「メタル・こうてつ・てつ・はがね」です。「ヒート・ねつ」と同じように、前者はほのおタイプ、後者ははがねタイプのカードで頻繁に見られるワードであり、これもヒードラン独自の特徴とは言えないでしょう。もっとも、この2項目が同数というのは、ほのお・はがねという固有のタイプを持つヒードランならではのデータではあります。

 

 

続いては「ヘビー・スタンプ・プレス・のしかかり」「マグマ・マントル」「ボンバー・ばく・ダイナマイト」が5件ずつで同率です。

ヘビー・スタンプ・プレス・のしかかり」はちょっと無理がある気もしますが自身の重さを攻撃に活かしているテキストとしてまとめました。430kgあるヒードランは、LEGENDSアルセウスの夢天連戦でも「巨体」としてカテゴライズされています。剣盾でも新技ボディプレスを当然のように新規習得していましたね。カードでも重量級ファイターとして認識されているのは同じなようです。

マグマ・マントル」はポケモンカードでは少し珍しい言葉で、他にこの言葉が使われたテキストを持っているポケモンはブーバー系統、ヒノアラシ系統、マグマッグ系統、ドンメル系統とグラードンだけです。ブーバーやマグマッグはマグマに浸って体力を回復する性質があり、バクーダは体内に火山を持っている、と他のポケモンたちは直接的にマグマと関わりがあるのに対して、ヒードランは図鑑説明だけだと「マグマのような血液」くらいしか関係性がなく(それも比喩!)、ゲーム本編における専用技マグマストームも説明文では炎の渦でしかありません。このテキストからは、図鑑での説明文以上にヒードランとマグマとの間に深い関係性があると考えられる、と言ってもいいでしょう。まあ、謎が多いとはいえ火山に暮らす伝説のポケモンがマグマに関する能力を一つも持っていないとは、これまでも考えにくかったですが……(高熱で溶けてしまう体をしているヒードランがマグマの中に入れるかどうかも気になります)。

ヒードランVMAXは特性「マグマゲイン」で体力を回復します。ゲーム本編では縁遠い回復を持っている点、これとマグマが結びついている点で不思議なカードです

 

 

ボンバー・ばく・ダイナマイト」は爆発属性のテキストとしてまとめました。「ボンバー」はマルマインフォレトスゴローニャみたいな爆弾組が技としてよく持っているほか、ハピナスやオクタンなどの爆発系の技が印象的なポケモンオコリザルキノガッサ等のボクサー系ポケモンも持っています。ヒードランに手は無いので素直に爆発の意味でしょう、4世代のイメージが強いですが、2022年に出たかがやくヒードランもボンバーと付く技を使います。ポケカにおけるヒードランにとって、爆発は今でも非常に重要な意味を持っていそうです。

「ばくねつ」はポケモンカードではなぜか多用される言葉で、ヒードランのほかにもほのおタイプを中心に使い手がたくさんいます。

 

 

 

 

 

お次が問題です。「ボイラー・スチーム」とつくテキストを持ったヒードランは4種類存在し、次点以降とは差があるため、ヒードランの特徴と言える言葉に該当するのはここまでになりそうです。ゲーム本編では「ボイラー」という語は聞き慣れませんが、ポケモンカードにおいても特に多用される言葉ではありません。というか、カード検索で調べてみても「ボイラー」とつくテキストを持っているのは(ADV以降では)ヒードランだけなので、これはまさしく今回の記事にふさわしい、ポケモンカードから新たに判明したヒードランの特徴・能力と言っていいでしょう!

 

ところで、ボイラーってそもそもなんぞや……と思い調べてはみましたが、

ボイラー(英: boiler)は、水を沸かし、湯や水蒸気をつくりだす設備や装置のことである[1]。日本工業規格(JIS)や学術用語集ではボイラと表記されるほか、汽缶(きかん、汽罐)、あるいは単に缶やカマともいう。(Wikipediaより引用)

うーん……?

水を沸かし、湯や水蒸気をつくりだす設備や装置

あれこれ本当にヒードラン関係ある???

これまでのゲーム本編におけるヒードランのテキストでは、「水を沸かす」はもちろん「湯」「水蒸気」に関係する言葉すら出てきませんでした。ヒードランは実は水と関係のあるポケモンなのでしょうか……。

ポケモン公式と言っても所詮は人なので、もしかしたら熱と深い繋がりのある鉄製品として適当にボイラーなる言葉を使い、その後も流れでボイラーを使い続けたのかもしれません。内容的には次項と被りますが、わざの内容についても見てみます。

ヒートボイラー 60+

相手が水ポケモンなら、40ダメージを追加。

いよいよヒードランと水との関わりが決定的になってきました。ボイラーという装置の役割的にも、わざの効果から見ても、ヒードラン自体が(それこそボルケニオンのように)水を操る訳ではなく、既にある水を熱するという点がヒードランの能力と言えそうです。

 

さて、ヒードランが水を熱するというだけでは「それで…?」という感想になってしまいますが、ここで一つ前の「ボンバー・ばく・ダイナマイト」という語、そしてヒードランが火山に関係するポケモンであるという点と結びつけると……「これって水蒸気爆発のことを言ってないか?」という一つの仮説に至りました。

水蒸気爆発とは超高温の物質に触れた水が一気に気化して起こる爆発のことで、火山が噴火するメカニズムの一つでもあります(この場合はマグマが水に触れて爆発する)。熱せられた水は気化して水蒸気となるや、その体積は1700倍にも膨れ上がり、これが一瞬にして起こることで地表の全てを吹き飛ばしながらマグマが外へと出てくる道筋が出来上がる、という流れです。ヲタクの一般常識ですね。

「前提」の項で紹介した通り、ヒードランの重要な要素として、自身の鋼鉄の体を溶かすほどの超高温があります。このポケモンが水と触れたならば、もしかすると水蒸気爆発を起こすことができるかもしれません。「ボイラー」という聴き慣れない単語は、その原因・熱源としてのヒードランの特徴を鉄製の汽缶に例える、ポケモンカードのセンスが光る技名と言えるでしょう。

「水蒸気爆発」というキーワードで「ボンバー・ばく・ダイナマイト」と「ボイラー・スチーム」を同じカテゴリとして集計すると、その数は9件。1位の「ヒート・ねつ・ねっ」の10件に迫る数になります(熱源という意味も含むので、ここをまとめてもいい気すらします)。これはヒードランの大きな特徴を発見できたのではないでしょうか。

 

水蒸気爆発という視点は、もうひとつ、「ヒードランは実際に火山を噴火させることができるのか」という長年の謎にも光を当ててくれます。ヒードランが(それこそ「伝説のポケモンらしく」)超自然的な力で火山を噴火させるのではなく、自身の持つ高熱という特徴によって、大量の水と触れた場合に大爆発を起こして火山噴火となる、という話になればこれまでのテキストとはかなりの部分で辻褄が合います(ヒードランが溶岩から生まれるという図鑑説明が本当であるならば、ヒードランは殆どの場合地表への露出を問わずマグマの近くにいるはずなので、必要な要素は水場だけになる)。

「なぜ図鑑に噴火に関する説明がないのか」という問題についても、ヒードランがいつどこでも噴火を起こせる訳ではなく、地下にマグマ溜まりのある水場で爆発を起こさなければ噴火にならないならば、実例を直接目にする機会はかなり限られるため、未だ研究できていないからだと考えられます。

 

 

文中でボルケニオンについて出てきたので、一応これについても補足しておきます。炎タイプの四足歩行(そして足の付き方が爬虫類っぽい)ポケモンで、水蒸気爆発を扱う600族、ということでヒードランとの共通項がいよいよ増えてきたボルケニオンですが、ポケカのテキストにおいても似通った特徴を持っています。

技名には「スチーム」はもちろん、「ヒート」「ばくねつ」「ダイナマイト」といったどこかで見たことある単語が並びます。ヒードランも作中の情報が少ないポケモンではありますが、特別不思議な異能を持っている訳でもなく、目撃例の少なさから幻のポケモンに分類されるボルケニオンはさらに作中のテキストが少なくなります。関係性を考察するには(情報量的に)まだ早い感じでしょうか……。

また、爆発としての意味がない水蒸気を意味する「スチーム」がテキストに含まれるカードを検索すると、ヒードランボルケニオンのほかにコータスキングドラボーマンダがいます。ポケカにおけるドラゴンポケモンは異なる2色のエネルギーを必要とすることが多く、ボーマンダは炎と水を要求することから水蒸気と関連付けられたのでしょう、レベル技で火炎放射、タマゴ技(現在は技マシン)でハイドロポンプを覚える元祖炎水複合ポケモンの名残が感じられます。

ボイラー系ヒードランの元祖は乱戦ポケモンスクランブルとのコラボカードで、独自のルールを使った遊び方ができました。現在比較的入手が難しいヒードランのカードです

 

 

 

残りの言葉は2件以下しか使われていないため、ハードランの特徴として重要視されているかと訊かれると微妙です。

「キバ」は「ほのおのキバ」を技として持っている場合のみを意味します。LEGENDSアルセウスでは図鑑タスクにも選出された、ヒードランの新たな得意技ですね。ちなみに、壁や天井を這い回る際に使う、ツメに関する技は「ガードクロー」の1件のみと、ネット上の知名度の割には多くありません。

「ストーム・かぜ(ふう)」は熱風とマグストが1件ずつです。どちらも炎系単語+風系単語で構成された、ゲーム本編でもよく見る技です。

「ガード」はそのまま頑丈な体を意味している技、「レイジング」は最近のカードに多い自分のカウンター路線の技に付けられています。「ほうしゃ」は単純にかえんほうしゃを使うヒードランが2種類いるだけです。

 

 

わざ・特性の名前を元にした考察は以上です。

ヒードランの一番のアイデンティティはやはり「高熱

・「ボイラー・スチーム」「ボンバー・ばく・ダイナマイト」という語の多用からは、ヒードラン自身の高熱によって水蒸気爆発を起こせる可能性が示唆されている

・転じて、ヒードランが起こすとされる火山噴火は、自身の高熱と水との接触によって起こるのではないか

目ぼしい成果はこんなところでしょう、正直思っていた以上に面白い結果となりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

2-2.わざ・特性の効果から見るヒードラン

続いて、実際のカードの性能でもある、わざ・特性の効果という側面からヒードランを考えてみます。

今回も、大まかに内容を分類したうえで集計する形をとります。「スタジアムが出ているならHPを回復」と「スタジアムが出ているならダメージを追加」はスタジアム関連効果として、「相手をやけどにする」と「相手は進化してもやけどが回復しない」はやけど関連効果として一括りにしています。効果が複数あるわざや特性(ヒードランlv.Xのヒートメタル等)は2つに分けて集計しました。

集計結果は以下の通りです。

自分のエネルギーをトラッシュする」効果のわざが最も多く、全体の18%にものぼりました。しかしながら、この効果は炎タイプのポケモンのコンセプトとも言えるテキストであり、ポケカを多少経験した方ならこの結果には何の感想も抱かないはずです。ヒードランも他の炎ポケモンの例に漏れず、高火力の代償としてエネルギーをトラッシュする効果を多く持ちます。ヒードランlv.Xやヒードランlv.47など、トラッシュしたエネルギーを付け戻したり、他のポケモンから付け替えることで、この大ダメージを連発できるシナジーを持ったカードも多く、自身が大ダメージを出しつつ他の炎ポケモンのサポートやカバーもできる点は、性能面での一つの特徴と言っていいでしょう。

 

次点はやけどに関するテキストです。単純に相手をやけどにする効果が大多数を占めますが、中には相手のやけどからの回復を阻害するような、ポケカ全体で見ても珍しい効果もあります。

やけどに関するテキストは初登場したDP期から本記事投稿時点で最新のヒードランVMAXまで、一貫して登場し続けており、これもヒードランの特徴と考えられます。

ゲーム本編における、4〜7世代のヒードランに強い印象を持っている方は少し意外に感じるかもしれませんが、8世代で解禁された夢特性ほのおのからだや、LEGENDSアルセウスマグマストームの追加効果が確定火傷に変更されたことからも、他の炎ポケモンと比べても火傷との関わりは深いように思えます。

 

 

エネルギーの移動に関するテキストは「別のポケモンから自分にエネルギーを付け替える」が3件、「トラッシュのエネルギーを付ける」が2件です。エネルギーを付け替えるテキストは炎ポケモンでは珍しいのですが、持っているポケモンには共通項が見られず、残念ながら何を意味しているのかは分かりません。ちなみに、DP期に出たスタジアム「ハードマウンテン」も自陣のエネルギーを付け替える効果を持っています。

 

自分のエネルギー数に応じてダメージが上昇する技は、3件とはしたものの「ついているエネルギーの数ぶんコインを投げ、オモテの数を参照する」「ついているエネルギーを好きなだけトラッシュしてその数を参照する」も含んでいるので、実際にこの効果を持つのはヒードランGXだけとなります。あまりヒードランの特徴とは言えないかもしれません。最大火力は非常に高いものの、普通にプレイするならかがやくヒードランの方が簡単に超火力を出すことができます。

 

スタジアムに関係するテキストを持ったヒードランはXY期から急に現れ始め、Fレギュではついにルール持ちも現れました。壁や天井を利用した立体的な動きが、バトルフィールドと関係していると捉えることもできますが、これも具体的に何を示しているのか確定ができません。

 

残るテキストはどれも2件以下で、件数的にもヒードランの「特に重要視されている特徴」には当てはまらないと思われます。「次ターンダメージ軽減」はドランの防御力の高さと、「別エネ追加要求」では(うち一件はプラズマエネルギーに関する文章となってしまいますが)、炎と鋼の両エネルギーを要求するドランの固有タイプに対応した効果となっています。

「アイロンハンマー」は炎エネルギーと鋼エネルギーを両方要求する、ヒードランの固有タイプそのもののような技

わざ・特性の効果を元にした考察は以上です。判明したヒードランの特徴としては、状態異常・やけどに関するものが多かったものの、これはゲーム本編からでも十分に分かるものであり、新たな発見は殆どないと言っていいでしょう。

 

 

 

 

 

 

2-3.その他ポケカのテキストから見るヒードラン

わざ・特性以外にもポケモンカードには性能に関するテキストが存在します。タイプ、HP、進化、弱点、抵抗力、にげるエネルギー、特別なルール等がこれにあたります。せっかくの機会なのでこれも少しだけ見ておきます。

 

といっても、HPは環境のインフレによって少しずつ増えており、相対的なデータを得るにしても同世代のカードどうしで比べるのは労力がかかります。ホエルオーやコイキング等の一部のポケモンであればHPに特徴は表れるものの、一般ポケモンでHPについて調べても「比較的タフ」ぐらいしか言えないため今回は割愛します。カードの進化や特別なルールについて見ても、ヒードランの場合は特に発見はありません。

 

(1枚を除いて)0~4まで設定されている「にげるエネルギー」については原作で素早さが高いポケモンや、軽いポケモンだと少なくなる傾向にあります(重さ1.2kgのナマコブシはS種族値5にも関わらず逃げエネ1だったり、最速のポケモン・レジエレキ(145kg)でもカードによっては逃げエネが3だったりする)。

ヒードランはご存知の通り、かなり上位の重量級ポケモンではありますが、他の重量級伝説ポケモンと同様に、そこまで鈍足という訳でもありません(S77)。にげるエネルギーについて見てみても、3が11種類、4は8種類という考察の余地のない結果となりました(一応比較対象として、最も体重の近いレジギガス(S種族値100→特性で半減)はすべて4、同速のアオガラス(16㎏)は1のみ、日食/月食ネクロズマ(460kg/350kg)は2〜3でした)。

 

弱点と抵抗力ですが、特に最近のカードでは、それぞれのタイプによって弱点と抵抗力が決まりきっている傾向があり、ヒードランもその例に漏れず、炎タイプの場合は弱点は水タイプとなり、ドランの弱点=地面タイプ、というゲームの価値観とは少しズレます。もっとズレるのが鋼タイプの場合で、本来特性のもらいびで炎技が無効のはずのヒードランですが、弱点は炎タイプとなっています。唯一、構築済みデッキヒードランvsレジギガス収録のヒードランlv.45のみは鋼タイプで水弱点と、原作に忠実なカードとなっています(DPtでは唯一の鋼タイプヒードランなので、当時はこだわりがあったのかもしれません)。

水弱点を持つ鋼タイプのヒードラン。炎鋼という複合タイプから想像はできるものの、直接的な関係はゲーム内で語られていない「製鉄」をテキストに持つ点も興味深いです。



 

 

 

 

3.まとめ:クリーチャーズ・株ポケが持っているヒードランへのイメージ

わざ・特性の名前、効果、その他のテキストという、ポケカにおける3つの要素からヒードランについて見てきました。特徴をまとめてみましょう。

ポケカの開発元である、クリーチャーズ(+株ポケ)が考えている、ヒードランの特に重要な要素は、

・高熱

・頑丈な鋼の体

・(水蒸気)爆発

・重さ

ではないかと考えられます。爆発に関する情報はゲーム本編では少なく、今回ポケカからヒードランの特徴を考えるにあたって最大の発見と言えるでしょう。一方で、図鑑説明にもある十字のツメはそこまで重要視されていないように見受けられました。

また、システム面におけるヒードランの戦い方としては、リスクを伴う高火力技や、火傷を用いた戦い方が想定されているようでした。

 

 

 

 

 

 

4.おわりに

なんか最初にHOME連携来ないとか言ってるけど、書いてる間に解禁されちゃった……!

 

今回はポケカからクリーチャーズ・株ポケが持っているヒードランへのイメージについて考察しましたが、書いてみて感じたのは「これ、ポケカじゃなくても良くね…?」です。

ポケモンにはポケカを含めて、ゲーム本編とは異なるメディアが多数存在します(アニメ、アーケード、ゲーム外伝など)。これらのどれもが一応どこかしらの公式の監修は経たものであるため、メディアの数だけ今回のようなアプローチができるということになるでしょう。外伝作品の中でも、特に本編と近い世界観のポケレンや、ポケモン自身が喋ってくれるポケダンなんかはいつかまとめて考察してみたいですね。

 

また、これまでポケモンカードについてはブログではほとんど取り上げてきませんでした。ADV期から始め、一応今日までゆるーく楽しんではいるものの、自分自身がbw期を最後に公式大会へは出ていないこともあって、文章にしても中途半端になりそうだったのが理由です。

昨今のポケカの高騰は、外から見ると怖い世界に思えるかもしれませんが、本当に高騰しているのは一部のカードくらいで、「好きなポケモンを集めたい・デッキを組んでみたい」くらいの気持ちで始めるならばとても優しくなっています。人気の加熱によってポケカを取り扱っているカードショップは以前と比較にならないほど増えましたし、フリマアプリ等への出品も増えて、当てることのできなかった昔のカードも格段に入手しやすくなっています。

何よりイラストが良いポケモンカード、この機会に好きなポケモンについて調べてみても新しい発見があって面白いかもしれません。

 

それでは

 

 

カードのヒードランもいいぞ!!!